愚痴・憎まれ口・無駄口・世迷言・独断と偏見・屁理屈・その他言いたい放題



その35.≪伝統文化も、「進化」するのです!≫


ジャスの本場アメリカの音楽界に於いて、30年間第一線で活躍して
おられる「秋吉敏子さん」が、最近ご自分のジャズバンドを解散なさ
ったと聞いて、とても寂しく思っていましたが、今夜NHK教育テレ
ビで秋吉さんの特集番組があり、とても印象に残った言葉が幾つもあ
りましたので、要約してご紹介したいと思います。

秋吉さんは、ジャズの大御所「デューク・エリントン」を大変に尊敬
しておられたそうですが、彼が亡くなった時の新聞記事を読んで、彼
が黒人である事にとても誇りを持っていた事を知って、深い感銘を受
けられたそうです。そこで、ご自分のルーツである日本の文化に改め
て興味を持ち、ジャズと日本の伝統音楽の融合を目標に、新しいアル
バムを発表されましたが、「和洋折衷じゃないか!」との厳しい批判
を受けました。それでも秋吉さんは、「何でも初めての新しい試みを
する時は、この手の批判は付き物で、『火を恐れるものは、台所に立
つな』という言葉もあるぐらいだから。」と、信念を持って独自の音
楽活動を続けている内に、「里神楽とのコラボレーションの音楽」や
「広島・長崎の原爆をテーマにした作品」など、次々と作曲の依頼が
来るようになり、批判の声は全く聞こえなくなったそうです。

また秋吉さんは、日本の文化を「間の文化」だとも言っておられまし
た。「絵画では、キャンバス全体を絵の具で埋め尽くす油絵に対して
、日本画は『空間』を大切にする。音楽でも、西洋の音楽は縦にリズ
ムを刻むのに対して、日本の伝統音楽は『横に流れる』『横にポーン
と飛ぶ』という特徴がある。」「西洋の音楽を基盤にしながらも、日
本の独特な繊細な感覚を持った作曲家(武満徹氏のことです)が、琵
琶をフィーチャーした素晴らしい作品(ノヴェンバーステップス)を
作ったように、日本の伝統音楽も進化し続けている。」とも言ってお
られました。この「進化」という言葉に、僕はとても共感しました。
日本舞踊も、単に時流に合わせた「変化」ではなく、更に「進化」す
る事が出来るんじゃないでしょうか。

秋吉さんがご自分のジャズバンドを解散された理由も、話しておられ
ました。「このところズッと作曲に専念してきたので、肝心のピアノ
が下手になってしまった。もう一度ピアノの練習に取り組んで、自分
自身の歴史を感じて貰えるように、もっとピアノが上手くなりたい。
それが30年間自分を育ててくれた、ジャズへの恩返しだと思う。」
との事でした。僕も踊り始めてから、今年で丁度40年になります。
僕を育ててくれた日本舞踊に、少しでも恩返しが出来るような舞踊家
に、僕も「進化」する事が出来るでしょうか。このところ、創作の構
成・演出や振付に割く時間が多くて、ともすると自分の稽古の時間が
少なくなりがちです。僕自身の半世紀以上に渡る歴史を、お客様に感
じ取って貰えるような踊りを踊れるように、もう一度自分を見つめ直
さなければと、今日はシミジミと考えさせられました。勿論、創作活
動を止めるという意味じゃないですヨ!サァまた明日から、大汗をか
きながら、稽古、稽古!!!(笑)




「僕の独り言」TOPへ

前ページへ  次ページへ